数十ボルトの放電で電子部品が壊れても「なんとなく調子が悪い」としか表れず原因が特定できない、帯電した衣類がホコリを吸い寄せて不良になる、可燃性のガスや粉体がある現場でわずかな火花が着火源になる——静電気は「バチッ」だけでは済みません。この記事では、それを防ぐ帯電防止作業服の仕組みから、必要な現場、JIS規格の見方、選び方と洗濯の注意点まで、発注担当者向けにやさしく解説します。先に結論をお伝えすると、「静電気で何が困るのか」を先に決め、規格表示と、靴や手袋との組み合わせまで見て選ぶことになります。服だけで対策は完結しません。

この記事を書いた人中村被服 企業ユニフォーム事業部創業100年以上・山口県防府市。山口の企業のユニフォーム発注を、営業が現場で日々お手伝いしています。プロフィール →

目次

静電気は「バチッ」だけでは済まない

冬場にドアノブで「バチッ」とくる、あの静電気。日常では不快なだけですが、現場では製品不良や事故の原因になります。人体が乾いた環境で歩くだけで数千ボルトの静電気を帯びることがあり、それが製品や設備に放電したときに問題が起きます。

具体的には、大きく3つのトラブルにつながります。まず電子部品の破損です。ICや基板は数十ボルト程度の放電でも壊れることがあり、しかも壊れ方が「なんとなく調子が悪い」という形で表れるため、原因の特定が難しいのが厄介なところです。

次に粉塵やホコリの付着。帯電した衣類はホコリを吸い寄せるため、精密機器や食品、塗装の現場では不良の原因になります。そして最も危険なのが引火・爆発で、可燃性のガスや粉体がある現場では、わずかな火花が着火源になり得ます。

こうしたリスクを、作業服の側から減らすために使われるのが「帯電防止作業服(制電服)」です。この記事では、その仕組みから必要な現場、規格の見方、選び方までを順番に整理していきます。

帯電防止作業服の仕組み — 「電気を逃がす道」をつくる

紺色の作業服の生地に導電糸が格子状に織り込まれているマクロ写真
生地をよく見ると、細い導電糸が格子状に織り込まれています。これが電気の通り道になります(イメージ)

普通の作業服の生地は、綿やポリエステルといった電気を通しにくい素材でできています。電気を通さないと聞くと安全そうに思えますが、静電気の観点では逆で、帯びた電気が逃げ場を失ってその場に溜まり続けてしまいます。

帯電防止作業服は、この生地に導電性の繊維(導電糸)を数ミリ〜1センチ程度の間隔で格子状やストライプ状に織り込んでいます。この一本の糸が「電気を逃がす細い道」の役割を果たし、溜まった静電気を少しずつ空気中や地面側へ放出します。生地をよく見ると、細い黒っぽい線や色の違う糸が等間隔で入っているのが分かることがあります。それが導電糸です。

ポイント

帯電防止=「静電気をゼロにする」ではなく「溜め込まずに少しずつ逃がす」仕組みです。急に大きく放電させない、いわば電気の“ガス抜き”をしている、とイメージすると分かりやすいです。

「静電」「制電」「帯電防止」は何が違うのか

カタログを見ていると、同じような場面で「静電」「制電」「帯電防止」という言葉が出てきます。厳密な使い分けが業界で統一されているわけではなく、メーカーによって表記が揺れているのが実情ですが、それぞれ意味の中心は少しずつ違います。

帯電物体に静電気が溜まること。現象そのものを指す言葉で、「帯電しにくい」のように状態の説明で使われます。
帯電防止静電気を溜め込みにくくし、逃がす機能のこと。機能名として最も一般的で、規格表記と一緒に出てくることが多い言い方です。
制電「静電気を制御する」という意味合いで、実務上は帯電防止とほぼ同義に使われます。商品名やシリーズ名(制電ポロシャツなど)に多い表記です。

実務で押さえておきたいのは、言葉の違いよりも「規格に適合しているかどうか」です。「制電」と書かれていても規格適合とは限りませんし、逆に「帯電防止」とだけ書かれた製品が規格に適合していることもあります。安全性が問われる現場ほど、言葉のニュアンスではなく規格表記で判断してください。

どんな現場で必要か

すべての現場で必須というわけではありません。ただ、次のような環境では導入を検討する価値が高いです。自社の作業内容と照らし合わせてみてください。

  • 電子部品・基板の組立:わずかな放電で部品が壊れる。静電気対策の中心的な現場です。
  • 精密機器・光学・医療機器:ホコリの付着が即不良につながるため、帯電を抑える意味が大きい。
  • 化学・粉体・塗装:可燃性の溶剤や粉じんがあり、火花が着火源になり得る現場。
  • 可燃性ガスを扱う現場:引火リスクが高く、安全上の要求として求められることが多い。
  • クリーンルーム:塵埃管理の一環として、帯電防止機能付きの専用服が使われます。
電子部品の精密組立ラインで基板を扱っている手元
電子部品や粉体・可燃物を扱う現場では、わずかな静電気が不良や事故につながります(イメージ)

逆に、屋外の一般的な建設・運送・農業のように、可燃物も精密部品も扱わない現場では、帯電防止を最優先にする必要はありません。まずは「自社の現場で静電気が実際にどんな問題を起こしているか(または起こし得るか)」を具体的に洗い出すことが、判断の出発点になります。

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規格の話をかみ砕く — JIS T 8118とは

帯電防止作業服には、性能を客観的に示すための規格があります。代表的なのがJIS T 8118(静電気帯電防止作業服)です。カタログに「JIS T 8118適合」と書かれていれば、生地の電気抵抗や帯電のしやすさが一定の基準を満たしていることを意味します。

もう少し踏み込むと、静電気には「衣服が電気を溜め込みにくいか(帯電性)」と「溜まった電気を逃がしやすいか(導電性・抵抗値)」という2つの見方があり、規格はこれらを測定して基準内に収まっているかを確認しています。

数値の細かい意味まで発注担当者が覚える必要はありません。カタログ表記と、可能であれば試験成績書(適合を示す書類)を確認できれば十分です。

注意

「帯電防止」「制電」という言葉だけが書かれていても、JIS適合とは限りません。可燃物を扱う現場など安全性が重要な場合は、規格名(JIS T 8118など)まで明記されているかを必ず確認してください。より高い防爆・引火対策が必要な現場では、別途の防爆基準が求められることもあります。

もうひとつ、海外との取引がある現場では国際規格の名前が出てくることがあります。静電気対策の分野ではIEC(国際電気標準会議)系の規格が使われており、電子部品を扱う工程では、作業服単体ではなく作業台・床・リストストラップまで含めた管理体制全体として要求されるのが一般的です。

取引先から特定の規格名を指定された場合は、その要求仕様に合う製品かどうかをメーカーに確認するのが確実です。国内の一般的な現場であれば、まずはJIS T 8118の表記を基準に考えて問題ありません。

買う前に「本当に帯電防止か」を見分ける方法

作業服の内側の織ネーム・下げ札を指でめくって確認しているところ
購入後に確認したいときは、内側の織ネームや下げ札の表示を見ます(イメージ)

「帯電防止と聞いて買ったが、本当にそうなのか分からない」という声はよくいただきます。見た目だけでは判断できないため、どこを見れば確認できるかを知っておくと確実です。

「制電」と「帯電防止」は、実は同じものを指していることが多いんです!

大事なのは呼び方より、その現場に必要な規格を満たしているかどうかですよ。

カタログ・商品ページ「JIS T 8118適合」など規格名まで書かれているか。「制電」だけの表記は要注意です。
下げ札・織ネーム製品そのものに規格や機能の表示があるか。購入後に確認したいときはここを見ます。
生地の見た目導電糸が格子状・ストライプ状に織り込まれていることが多いです。ただしこれだけでは適合の証明にはなりません。
試験成績書安全性が重要な現場では、適合を示す書類を取り寄せられるかを確認しておくと安心です。
メーカーへの確認品番を伝えれば確実です。取引先から規格を指定されている場合は、この確認が必須になります。

「カタログに“制電”と書いてあったので大丈夫だと思っていた」というご相談は実際にあります。取引先の監査で規格の表記を求められて、はじめて確認が必要だと気づくケースも少なくありません。あとから慌てないよう、導入時に規格表記まで押さえておくと安心です。

生地に細い格子模様が見えると「これは帯電防止だ」と判断されがちですが、導電糸が入っていること=規格適合、ではありません。織り込みの密度や抵抗値によって性能は変わります。現場の安全に関わる場合は、必ず規格表記と書類まで押さえてください。

選び方のポイント

機能が同じでも、現場で使い続けられるかどうかで満足度は大きく変わります。次の3点を軸に選ぶと失敗しにくくなります。

着心地・素材導電糸が入っていても、綿混なら汗を吸いやすく、ポリエステル主体なら乾きやすい。夏場の暑さ対策として通気性や軽さも見る。
洗濯耐久性工業洗濯(強い洗浄)を繰り返しても帯電防止性能が落ちにくい仕様か。リース洗濯を使う場合は特に重要。
他機能との両立帯電防止に加え、防炎・撥油・引裂き強度などが必要な現場も多い。求める機能を優先順位付けして選ぶ。

また、部署ごとに服がバラバラだと在庫管理も発注も煩雑になります。帯電防止が必要な部署と不要な部署を切り分けたうえで、シリーズを揃えると、色・デザインの統一感を保ちつつ管理も楽になります。刺繍やプリントで社名・部署を入れる場合も、帯電防止の生地に対応できるかを事前に確認しておくと安心です。

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服だけでは完結しない — 靴・手袋・床とセットで考える

作業服の上下と安全靴、作業手袋を平置きで並べたところ
服・靴・手袋がそろって、はじめて電気の通り道ができます(イメージ)

帯電防止作業服は、体に溜まった静電気を「逃がしやすくする」ための装備です。ただし、逃がした先がなければ電気は行き場を失います。服・靴・床がつながって初めて、静電気は地面へ抜けていきます。

作業服だけ制電にして、安全靴と手袋がそのままというケースをよく見かけます。

足元から抜けないと意味が薄れてしまうので、セットで見直すのがおすすめです。

帯電防止作業服衣服自体が帯電しにくく、電気を溜め込まないようにする
静電気帯電防止靴(静電靴)体に溜まった電気を床へ逃がす「出口」の役割を果たす
導電性の床材・マット靴から流れた電気を安全に逃がすための経路
作業手袋部品を直接扱う工程で、手からの帯電・放電を抑える
湿度管理・設備のアース乾燥する時期の帯電を抑える。設備側の接地も欠かせない

「服を替えたのに効果が実感できない」というご相談で足元を伺うと、靴が普通のスニーカーのまま、ということがよくあります。服・靴・床のどこかが切れていると、電気の通り道ができません。

作業服だけを帯電防止にして靴が絶縁性のままだと、電気の逃げ道がなく、期待した効果が出ないことがあります。どこまで揃えるかは現場のリスクの大きさによりますが、「服・靴・床」は一組で考えると覚えておくと判断しやすくなります。

取引先から静電対策を求められている場合は、服だけを替えて終わりにせず、足元と作業環境まで含めて相談することをおすすめします。

洗濯とメンテナンスの注意

帯電防止作業服は、正しく扱わないと効果が落ちていきます。長く性能を保つために、次の点に気をつけてください。

  1. 柔軟剤の使いすぎに注意:柔軟剤の成分が導電糸をコーティングし、電気を逃がす働きを妨げることがあります。製品の表示に従うのが基本です。
  2. 破れ・すり切れは放置しない:導電糸が切れると、その部分は普通の生地と同じになります。摩耗の激しい肘・膝まわりは特に点検を。
  3. 洗濯表示を守る:高温や強い薬剤で生地が傷むと性能低下につながります。リース洗濯なら業者に仕様を共有しておくと安心です。

注意

帯電防止作業服を着ればすべての静電気事故を防げる、というわけではありません。あくまで対策の一部です。帯電しにくい服に加えて、アース(接地)、静電靴、床材、加湿による湿度管理など、現場全体での対策と組み合わせて初めて効果を発揮します。作業服は「土台の一つ」と考えるのが実態に近いです。

まとめ

帯電防止作業服は、生地に導電糸を織り込み、静電気を溜め込まず少しずつ逃がすことで、部品破損・粉塵付着・引火といったトラブルのリスクを下げる作業服です。電子部品・精密機器・化学・粉体・可燃物を扱う現場では、導入を検討する価値があります。

選ぶ際は、JIS T 8118などの規格表記を確認しつつ、着心地・洗濯耐久性・他機能との両立の3点を軸にすると失敗しにくくなります。そして、効果を保つには柔軟剤や破れへの配慮、現場全体での静電気対策との組み合わせが欠かせません。

どの現場にどこまでの機能が要るかは、作業内容を見ないと決まりません。中村被服 企業ユニフォーム事業部では、帯電防止をはじめとする機能作業服の選定と、その後の廃番・追加までを同じ窓口で受けています。

よくあるご質問

帯電防止作業服とは何ですか。

生地に導電糸を織り込むことで、静電気を溜め込みにくくし、溜まった電気を少しずつ逃がすようにした作業服です。電子部品の破損、粉塵の付着、可燃物への引火といった、静電気が引き起こすトラブルのリスクを下げることを目的としています。

帯電防止作業服の見分け方はありますか。

カタログや商品ページに「JIS T 8118適合」などの規格名が明記されているかを見るのが基本です。製品の下げ札・織ネームにも表示があります。生地に格子状の導電糸が見えることも多いですが、それだけでは規格適合の証明にはならないため、安全性が重要な現場では試験成績書やメーカーへの確認まで行ってください。

JIS適合品とはどういう意味ですか。

JIS T 8118(静電気帯電防止作業服)が定める基準を満たしていることを示します。生地が電気を溜め込みにくいか、溜まった電気を逃がせるかを測定し、基準内に収まっていることが確認された製品です。数値の細部まで覚える必要はなく、規格表記と、必要に応じて適合を示す書類を確認できれば十分です。

帯電防止作業服の仕組みはどうなっていますか。

普通の生地は電気を通しにくいため、摩擦で発生した静電気が衣服に溜まっていきます。帯電防止作業服は生地に細い導電糸を格子状に織り込み、そこを通して電気を少しずつ逃がします。「電気を溜めない」のではなく「電気の逃げ道をつくる」装備だと考えると理解しやすくなります。

洗濯を繰り返すと効果は落ちますか。

扱い方によっては性能が落ちます。柔軟剤の成分が導電糸をコーティングして働きを妨げることがあるほか、破れやすり切れで導電糸が切れた部分は普通の生地と同じ状態になります。洗濯表示に従い、摩耗の激しい肘や膝まわりは定期的に点検してください。工業洗濯を使う場合は、洗濯耐久性の高い仕様を選ぶことをおすすめします。

「制電」と「帯電防止」は違うものですか。

実務上はほぼ同義で使われています。ただし表記の揺れであって性能を保証する言葉ではないため、「制電」とだけ書かれていても規格適合とは限りません。安全性が問われる現場では、言葉ではなく規格表記で判断してください。

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「何から決めればいいか分からない」段階でも大丈夫です。現場の状況を伺って、目利きでご提案します。カタログ請求・お見積は無料です。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、内容の正確性・完全性を保証するものではありません。規格・法令の適用可否や最新の仕様は、製品カタログや公的機関・各メーカーの情報で必ずご確認ください。

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大正13年(1924年)創業、100年以上にわたる被服づくりの経験を活かし、山口県防府市を拠点に製造業の作業服・事務服・空調服・保護具の選定から、社名刺繍・プリントの自社加工、名入れ後の追加発注まで対応しています。山口・広島・福岡エリアの現場のユニフォームを、選定から運用までまるごとお手伝いしています。