翌年に本体だけ買い足すつもりが、ファンやバッテリーの規格が変わって流用できずまとめ買いになる。洗濯前の取り外しを忘れて水濡れで壊す。試着せず大量発注して「思ったより涼しくない」「サイズが合わない」と後悔する。空調服(ファン付きウェア)ではこうした失敗が起こりがちです。この記事では、そうした後悔を防ぐための5つの選定ポイントを、現場の作業内容に沿って具体的に解説します。先に結論をお伝えすると、空調服は形・ファン・バッテリーの3点を数字で押さえ、そもそも使えない工程がないかを確認してから選ぶ、が基本です。

この記事を書いた人中村被服 企業ユニフォーム事業部創業100年以上・山口県防府市。山口の企業のユニフォーム発注を、営業が現場で日々お手伝いしています。プロフィール →

目次

そもそも空調服(ファン付きウェア)とは何か

空調服とは、服の腰あたりに小型のファン(送風機)を2基取り付け、外気を服の中に取り込んで循環させるウェアのことです。取り込んだ風が体の表面を通り抜けるとき、汗が蒸発します。この「汗が気化するときに熱を奪う」現象を利用して、体感温度を下げるのが基本的な仕組みです。

ポイントは、エアコンのように空気そのものを冷やしているわけではない、という点です。あくまで汗の蒸発を助けて涼しく感じさせる装置なので、汗をかく前提の環境や、風が抜けやすい着方をして初めて効果が出ます。逆に言えば、湿度が非常に高い場所や、汗が乾きにくい状況では効果が落ちることも知っておく必要があります。

ポイント

空調服は「服を冷やす」のではなく「汗を乾かして涼しく感じさせる」道具です。この違いを理解しておくと、後述する生地選びや運用ルールの意味がわかりやすくなります。

なぜ涼しく感じるのか — 「風が汗を飛ばす」仕組み

空調服は、服の中を冷やしているわけではありません。ファンで外気を取り込み、体の表面に風を流すことで汗を気化させ、その気化熱で体温を下げています。エアコンのように空気を冷やす装置ではなく、「汗をかいた体をうちわで扇ぎ続けている」状態に近いと考えると分かりやすくなります。

風が汗を飛ばして体温を下げる ① 背中下部のファンが外気を取り込む ② 服の中を風が流れる 上に抜ける空気の通り道ができる ③ 汗が蒸発する 気化熱で体温が下がる 外気 つまり「冷やす」のではなく「汗を蒸発させる」装置
空調服は空気を冷やすのではなく、汗の蒸発を促して体温を下げる

この仕組みからは、実務で効いてくる性質がいくつも導けます。

  • 汗をかいていないと効果が出にくい:気化させる水分がなければ涼しさは感じにくくなります。動き始めてから効いてくるのはこのためです。
  • 湿度が高い日は効きが落ちる:空気が水分を含みきっていると、汗が気化しにくくなります。梅雨時に「思ったより涼しくない」と感じるのはこれが理由です。
  • インナー次第で体感が変わる:汗を素早く広げて乾かすインナーを着ると、風が当たる面積が増えて効果が上がります。
  • 服の中で風が通らないと意味がない:裾や袖口が開きっぱなしだと風が抜けてしまいます。空気を「服の中に一度ためて」から抜く設計が前提です。

「着れば涼しい」ではなく「使い方で効果が変わる」装備だという点を、導入時に現場へ共有しておくと、使われないまま眠るリスクを減らせます。

空調服は3つのパーツでできている

空調服のベスト型・半袖型・長袖型を並べて比較
ベスト・半袖・長袖。屋内はベスト、屋外は長袖が出発点です(イメージ)

選ぶときに混乱しやすいのは、空調服が単体の製品ではなく、3つの部品の組み合わせだからです。それぞれ別売りのことも多く、互換性の確認も必要になります。

ウェア(服)形(ベスト・半袖・長袖)と生地を選びます。作業内容と季節で決まる部分です。
ファン風量・静音性・厚み・重さが違います。ウェアに取り付けて使います。
バッテリー稼働時間と重さ、電圧が違います。ファンと同じメーカー・規格で揃えるのが基本です。

ここでもっとも多い失敗が、ファンとバッテリーの互換性です。メーカーが違えば接続できないことがあり、同じメーカーでも世代が変わると使えない場合があります。すでに手元にあるファンやバッテリーを流用したい場合は、必ず品番まで確認してください。まとめて導入するなら、最初から同一メーカー・同一世代で統一しておくと、翌年以降の追加や修理がはるかに楽になります。

ポイント① ウェアの「形」を作業内容で選ぶ

空調服には主にベスト・半袖・長袖・フルハーネス対応の4タイプがあります。同じ職場でも、作業内容によって最適な形は変わります。まずは現場ごとに、どの形が向くかを整理しておくと発注時に迷いません。

  • ベスト:腕を大きく動かす組立・検品作業向き。腕まわりに生地がなく動きやすい反面、直射日光には腕がさらされます。
  • 半袖:屋内〜半屋外のバランス型。腕の日焼けはある程度防ぎつつ、動きやすさも確保できます。
  • 長袖:屋外・粉塵・切創リスクのある現場向き。肌の露出を抑えられ、袖口を絞れば風が抜けにくく体感が上がります。
  • フルハーネス対応:高所作業で墜落制止用器具(フルハーネス)を装着する現場向き。ハーネスのベルトを通すスリットや、ファン位置が干渉しない設計になっています。

注意

高所作業でフルハーネスを使う現場は、必ず「フルハーネス対応」表記のあるモデルを選んでください。通常タイプにハーネスを重ねると、ベルトがファンの吸気口をふさいだり、送風経路を潰してしまい効果が大きく落ちます。

向いている場面注意したい点
ベスト腕を大きく動かす作業、屋内の組立や倉庫。腕まわりが軽く、動きを邪魔しません。腕が直射日光にさらされます。屋外の炎天下では日焼け・熱の影響を受けやすくなります。
半袖ベストと長袖の中間。屋内外を行き来する現場で使いやすい形です。肘から先が露出するため、火花や薬品を扱う工程には向きません。
長袖屋外の直射日光下、粉塵や飛散物のある現場。肌を覆うぶん、実は屋外では長袖のほうが涼しく感じることも多い形です。袖口から風が抜けやすいため、絞れる仕様かを確認します。
フード付き頭部や首まわりまで日差しを避けたい屋外作業。ヘルメットの上から被れる型もあります。かさばるため、狭い場所での作業には不向きな場合があります。

「涼しさ=露出が多いほうがいい」と思われがちですが、屋外では逆になることがあります。直射日光が肌に当たると輻射熱で体温が上がるため、覆ったうえで中に風を通す長袖のほうが、結果的に体感が良いケースが少なくありません。屋内なら動きやすいベスト、屋外なら長袖、が実務での出発点です。

ポイント② ファンとバッテリーを数字で確認する

空調服は本体(ウェア)・ファン・バッテリーが別売りのことが多く、この組み合わせで涼しさと使い勝手が決まります。カタログの数字を、以下の目安で読み解いてください。風量(送る空気の量)と電圧(バッテリーの出力)、そして稼働時間の3つが軸になります。

ファンとバッテリーは、必ず数字で確認してください!

カタログの「強力」「大容量」という言葉だけで選ぶと、現場に入ってから足りないことがあります。

項目見るポイントと目安
電圧(V)一般的な目安は7〜9V。数字が大きいほど風量を上げやすいが、その分バッテリー消費も早い。
風量(L/秒)猛暑日や屋外は強め、屋内軽作業は弱めで十分。強弱を段階切替できるモデルが扱いやすい。
連続稼働時間強運転で数時間、弱運転で半日以上が目安。1勤務を通せるか、風量設定ごとの時間で確認する。
互換性ファンとバッテリーはメーカー・シリーズで規格が異なる。前年の資産を使い回せるか必ず確認。

特に見落としがちなのが最後の互換性です。翌年に本体だけ買い足すつもりが、ファンやバッテリーの規格が変わって流用できず、結局まとめ買いになるケースがあります。導入時に「来年も同じ規格が続くか」を確認しておくと、追加発注が楽になります。

空調服のファン2個とバッテリーを並べた様子
ファンの風量とバッテリーの出力・持続時間は、必ず数字で確認する

ファンを選ぶときに見る4点

  • 風量:数値が大きいほど風は強くなりますが、そのぶんバッテリーの減りも早くなります。最大風量だけでなく、実際に使う中間の風量で何時間もつかを見ます。
  • 静音性:屋内や会話が必要な現場では、作動音が想像以上に気になります。強風量にすると音も大きくなるため、静かなモデルかどうかは事前に確認したいところです。
  • 厚み:ファンが厚いと、椅子の背もたれや壁に当たります。座る時間が長い工程では薄型が快適です。
  • 重さ:ファン2個とバッテリーの合計が腰と背中にかかります。長時間の着用では、この重さが疲労に直結します。

バッテリーを選ぶときに見る4点

  • 稼働時間:1日の作業時間をカバーできるかが基準です。休憩中に充電できる環境があるかどうかでも必要な容量は変わります。
  • 電圧:高い電圧のモデルほど風は強くなる傾向ですが、対応するファンが限られます。ウェア・ファンとセットで考えます。
  • 重さ:容量が大きいほど重くなります。腰に付けるため、動きの多い工程では軽さを優先する判断もあります。
  • 充電時間と個数:まとめて導入する場合、充電場所と充電器の数が運用のボトルネックになります。人数分の充電をどこで行うかまで含めて計画してください。

カタログの数値は最大値で書かれていることが多いため、「実際に使う風量で、1日もつか」という見方をすると失敗しません。導入前に1セット試して、自社の作業時間で足りるかを確かめておくのが確実です。

空調服の背中に取り付けられたファンのクローズアップ
ファンは風量だけでなく、静音性・厚み・重さも効いてきます(イメージ)

ポイント③ 生地は「耐久・遮熱・作業性」で見る

空調服は風を服の中に溜めて循環させるため、生地に求められる性質が通常の作業服と少し違います。選ぶときは、次の3点をバランスで判断してください。

  1. 耐久性:ポリエステル主体は軽く乾きやすい一方、火花に弱い場合があります。溶接など火気を扱う現場は綿混や難燃素材を検討します。
  2. 遮熱・遮光:屋外は日差しそのものが暑さの原因です。遮熱加工や濃色でも熱がこもりにくい生地だと、体感が変わります。
  3. 作業性(空気の抜けにくさ):襟元や袖口が締まる設計だと、取り込んだ風が逃げにくく涼しさが上がります。裾のドローコードの有無もチェックします。

生地は薄ければ涼しい、というわけではありません。薄手すぎると耐久性が落ち、粉塵や火花のリスクがある現場では不向きです。現場の危険要因と洗濯頻度をふまえて選ぶのが、結果的に長く使えるコツです。

ポイント④ 運用ルールを先に決めておく

空調服でトラブルになりやすいのは、モノ選びより運用の詰めが甘いときです。特にファンとバッテリーは電子部品なので、扱い方を全員で揃えておかないと故障や紛失が増えます。導入前に、最低限これだけは決めておきましょう。

  • 充電:誰が・いつ充電するか。前日夜に各自か、職場で一括か。予備バッテリーを何本持つか。
  • 貸与管理:本体・ファン・バッテリーを誰に何個貸したか台帳化する。退職・異動時の返却ルールも。
  • 洗濯:洗う前に必ずファンとバッテリーを取り外す。取り外し忘れによる水濡れ故障が最も多いトラブルです。

注意

ファンやバッテリーを付けたまま洗濯機に入れると、ほぼ確実に故障します。洗濯前の取り外しは、着用者に口頭で伝えるだけでなく、貸与時のルールとして紙で渡しておくと徹底されやすくなります。

ポイント⑤ 必ず試着・実機で体感してから決める

カタログの数字だけで大量発注すると、「思ったより涼しくない」「サイズが合わない」という後悔につながります。空調服は風で服が膨らむため、普段の作業服より1サイズ大きめが目安になることもあり、実際に着てみないと最適サイズが読めません。

可能なら、代表者数名で実機のファンを回した状態を体感し、風量の段階・膨らみ具合・動きやすさを確認してください。あわせて、支給人数分のサイズ内訳(S〜4Lなど)を早めに把握しておくと、シーズン前の欠品を避けられます。空調服は夏前に需要が集中するため、発注は早めが鉄則です。

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インナー選びで体感が変わる

吸汗速乾のメッシュインナーシャツ
汗を素早く広げて乾かすインナーが、空調服の効果を左右します(イメージ)

空調服は汗の気化で涼しさを生むため、下に何を着るかで効果がはっきり変わります。ここを外すと「高いのに涼しくない」という評価になってしまい、せっかく導入しても使われなくなります。

  • 吸汗速乾のインナーを着る:汗を素早く吸って広げ、乾きやすい素材が向きます。汗が一か所に溜まらず、風の当たる面積が広がります。
  • 綿100%の肌着は不利:汗を吸ったまま乾きにくく、濡れた布が肌に張りつくと風が通りません。夏場の定番ですが、空調服との相性はよくありません。
  • 体にフィットするものを選ぶ:ぶかぶかだと生地が肌から離れ、汗を拾えません。コンプレッションタイプが好まれるのはこのためです。
  • 「何も着ない」は逆効果になりやすい:素肌に直接風が当たると一瞬は涼しく感じますが、汗が広がらず気化しにくいため、結果的に効率が落ちます。

まとめて導入するときは、インナーもセットで案内しておくと現場での評価が安定します。服だけ配って「涼しくない」と言われるのは、多くの場合ここが原因です。

サイズは「少し余裕を持たせる」が基本

空調服は服の中に空気をためて流す構造のため、体に密着しすぎると風の通り道がなくなります。普段の作業服と同じ感覚で選ぶと、ぴったりすぎて効果が落ちることがあります。

とはいえ、大きすぎれば動きにくく、機械への巻き込みリスクも上がります。「風が通る余裕はあるが、作業の邪魔にならない」ちょうどよい範囲を、実物で確かめるのが確実です。ベストタイプは比較的サイズの自由度がありますが、長袖は袖が長すぎると危険なので、必ず試着してください。裾や袖口を絞れる仕様であれば、多少ゆとりがあっても空気を保ちやすくなります。

使えない現場・注意が必要な場面

空調服はどこでも使えるわけではありません。導入前に必ず確認しておきたい制約があります。ここを飛ばすと、買ったのに使えないという事態になりかねません。工程ごとの判断は空調服が使えない現場と導入前の確認方法で詳しく整理しています。

「空調服を入れたいけど、うちの現場で使えるのか分からない」というご相談は多いですよ。

火気や粉塵がある現場は条件が変わるので、遠慮なく状況を教えてください。

火気・溶接のある現場ファンが空気を送り込むため、火花が入ると燃え広がるおそれがあります。難燃素材の対応品を選ぶか、使用そのものを避ける判断が必要です。
粉塵の多い現場ファンが粉塵を吸い込み、服の中に運んでしまうことがあります。粉塵の種類によっては健康面のリスクにもなります。
可燃性ガス・防爆エリア電気製品の持ち込みが制限される区域では、そもそも使用できないことがあります。設備側のルールを必ず確認してください。
異物混入を嫌う工程食品や精密機器の工程では、ファンの吸気や機器そのものが管理対象になることがあります。
フルハーネス着用の高所作業ハーネスの上から着る/下に着るで空気の通り方が変わります。ハーネス対応の設計になっている品番を選びます。

「隣の現場が使っているから」で決めず、自社の工程ごとに可否を切り分けることが大切です。使える工程と使えない工程が混在する場合は、対象部署を明確にしてから導入すると混乱がありません。

洗濯・保管と、ファン・バッテリーの寿命

空調服は電気製品を含むため、普通の作業服と同じ扱いはできません。運用ルールを決めずに配ると、故障や紛失が続いて結局使われなくなります。

  • 洗う前に必ずファンとバッテリーを外す:付けたまま洗濯すると故障します。ここは配布時にいちばん強く伝えるべき点です。
  • ウェアは洗濯表示に従う:ファンの取り付け部は傷みやすいため、ネットに入れる、裏返すといった配慮で持ちが変わります。
  • シーズンオフの保管:バッテリーは満充電でも空でもない状態で、高温を避けて保管するのが一般的です。翌シーズンに使えないという事態を防げます。
  • 寿命は消耗品と考える:ファンとバッテリーは使用頻度に応じて劣化します。ウェアより先に寿命が来るため、数年ごとに買い替えが発生する前提で予算を組んでおくと計画が狂いません。

バッテリーの持ちが落ちてきたら、ウェアはそのままでバッテリーだけ交換できます。同一メーカー・同一規格で統一しておく利点は、この買い替えのときにも効いてきます。

買い替えの際は、価格だけで互換品を選ばないでください。リチウムイオン蓄電池は電気用品安全法の規制対象で、対象品にはPSEマークの表示が必要です。表示の見方と、シーズンをまたぐ管理は空調服のバッテリー寿命と交換・保管の判断にまとめています。

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業種・現場別の選び方

製造・組立(屋内)ベストが動きやすく定番。静音性を重視すると会話の妨げになりません。帯電防止が必要な工程では、対応品かを確認します。
建設・土木(屋外)直射日光を避けられる長袖やフード付きが有利。フルハーネス対応か、高視認性が必要かもあわせて確認します。
倉庫・運送荷役で腕を動かすためベスト向き。乗降が多い場合は、ファンの厚みが座席に当たらないかを見ます。
食品・厨房まわり異物混入対策の観点から、使用可否を衛生管理のルールと突き合わせる必要があります。
溶接・鋳造火花のリスクがあるため、難燃対応品を選ぶか使用を避けます。安易な導入は危険です。

法人でまとめて導入するときの進め方

個人が1着買うのと、会社が数十人分をそろえるのとでは、考えることがまったく違います。まとめて導入するなら、次の順で進めると失敗が減ります。

  1. 対象部署を決める:全員に配るのか、屋外や高温工程だけかを先に切り分けます。使えない工程がないかもここで確認します。
  2. 1セット試して現場の反応を見る:カタログの数値ではなく、自社の作業時間・環境で足りるかを確かめます。
  3. メーカーと規格を統一する:ファンとバッテリーの互換性を揃えておくと、翌年の追加も故障時の交換も簡単になります。
  4. 充電と保管の運用を決める:どこで充電し、誰が管理し、シーズンオフはどう保管するか。ここを決めずに配ると必ず混乱します。
  5. 名入れとあわせて発注する:社名を入れる場合、ファンの取り付け位置を避けた場所に入れる必要があります。加工前に位置を確認しておくと確実です。

まとめて導入されたあとに多いご相談が「バッテリーの充電場所が足りない」というものです。人数分を一斉に充電できるか、休憩時間内に間に合うかまで見ておくと、運用が回ります。服の選定と同じくらい、ここが大事です。

ここまでの内容を、発注前に確認する項目としてまとめておきます。

買う前に確認する7つのこと

  • 自社の工程で使えるか(火気・粉塵・防爆・異物混入の制約はないか)
  • 形はベスト・半袖・長袖・フード付きのどれが合うか
  • 実際に使う風量で、1日の作業時間をカバーできるか
  • ファンとバッテリーの互換性は揃っているか
  • フルハーネスや帯電防止など、他に必要な機能と両立するか
  • インナーもあわせて用意できているか
  • 充電・保管・洗濯の運用ルールを決めたか

費用の考え方 — 「一着いくら」で見ない

空調服の予算がつかみにくいのは、ウェア・ファン・バッテリーの3点がそれぞれ別の費用になるからです。ウェア本体の価格だけを見て予算を組むと、実際の見積もりで想定を超えることになります。

初年度にかかるものウェア+ファン+バッテリーの3点。全員分そろえるため、初年度がもっとも大きくなります。名入れを入れる場合はその加工費も加わります。
翌年以降にかかるもの増員分の追加と、劣化したファン・バッテリーの買い替え。ウェアはまだ使えても、電気部品だけ先に交換が必要になります。
抑えられるところウェアを継続して使い、部品だけ交換する運用。そのためにメーカーと規格を統一しておくことが効いてきます。

「初年度に全部そろえて、以降は部品を回していく」という考え方で組むと、数年単位の予算が読みやすくなります。人数と使用工程をお伝えいただければ、無料でお見積りします。

メーカーはどう選ぶか — 性能より「揃えられるか」

空調服はメーカーごとにファンとバッテリーの規格が異なり、他社製と組み合わせられないのが普通です。そのため、法人でまとめて使うなら「どのメーカーが高性能か」より「揃えて使い続けられるか」のほうが重要になります。

  • 供給の安定性:翌年も同じシリーズが続くか。毎年モデルが入れ替わると、追加のたびに互換性を確認する手間が生じます。
  • 入手のしやすさ:夏前は需要が集中し、人気品番から欠品します。必要な時期に必要な数を確保できるかは、性能表には出てこない差です。
  • 部品だけの買い替え:ファンやバッテリーが単体で購入できるか。ここが確保できていると、数年後の維持費が抑えられます。
  • 作業服本体との統一感:すでに使っている作業服と同じメーカーで揃えられれば、色やデザインの統一もしやすくなります。

どのメーカーが自社の使い方に合うかは、現場の作業時間と必要な機能から決まります。特定メーカーの代理店だけに聞くとその中からしか選べないので、複数メーカーを横断して比較できる相手(取扱いメーカー)に相談するほうが、候補の幅が出ます。一度決めたら数年は同じ規格で回すことになるため、最初の選定は慎重に進める価値があります。

空調服だけに頼らない — 現場全体の熱中症対策

空調服は有効な装備ですが、これだけで熱中症を防げるわけではありません。「空調服を配ったから対策済み」と考えてしまうのが、いちばん危ない状態です。装備・環境・運用の三方向で組み立てるのが基本になります。

装備で対策する空調服のほか、保冷剤ベスト、冷感インナー、ヘルメット用の日除けなど。組み合わせると効果が上がります。
環境を変えるスポットクーラー、送風機、日除け(テント・シート)、休憩できる涼しい場所の確保。服だけでは環境の暑さは変えられません。
運用で守るこまめな水分・塩分補給、作業時間と休憩のサイクル、暑さ指数に応じた作業調整、体調確認の声かけ。

とくに見落とされやすいのが「空調服を着ていると汗をかいた自覚が薄れる」点です。風で汗が乾くため、実際には水分が失われているのに気づきにくくなります。導入時には、水分補給を今まで以上に意識するよう現場へ伝えてください。装備が増えたぶん油断が生まれる、という逆説的なリスクがあります。

まとめ

空調服選びは、①作業内容に合った形、②ファンとバッテリーの数字、③現場に合う生地、④運用ルールの事前決定、⑤試着・実機体感、の5点を押さえれば大きな失敗は防げます。特に互換性と運用ルールは、翌年以降の追加発注や故障の多さに直結するので、導入時にしっかり詰めておきたいところです。

最後に一点だけ。空調服はあくまで熱中症対策の「補助」であり、これさえ着れば安全というものではありません。こまめな水分・塩分補給、休憩の確保、体調管理と組み合わせて初めて効果を発揮します。過信せず、他の対策と併用してください。

中村被服 企業ユニフォーム事業部では、機種の提案から刺繍・プリントの加工、翌年の追加や廃番時の対応までを同じ窓口で受けています。「前回と同じ仕様で」が通じる状態にしておくと、毎年の発注はぐっと軽くなります。

よくあるご質問

空調服が使えない現場はありますか。

あります。火花が飛ぶ溶接現場ではファンが空気を送り込むことで燃え広がるおそれがあり、粉塵の多い現場ではファンが粉塵を吸い込みます。可燃性ガスを扱う防爆エリアでは電気製品の持ち込み自体が制限される場合があり、食品や精密機器の工程では異物混入の観点から管理対象になることもあります。工程ごとに可否を確認してください。

ベスト・半袖・長袖では、どれがいちばん涼しいですか。

環境によって変わります。屋内で腕を動かす作業ならベストが動きやすく快適ですが、屋外の直射日光下では、肌を覆ったうえで中に風を通す長袖のほうが体感がよいことが多いです。露出が多いほど涼しいとは限らない、という点が空調服の分かりにくいところです。

空調服の寿命はどのくらいですか。

ウェアよりも、ファンとバッテリーのほうが先に寿命が来ます。どちらも使用頻度に応じて劣化する消耗品なので、数年ごとに買い替えが発生する前提で予算を組んでおくと計画が狂いません。ウェアはそのままで、ファンやバッテリーだけ交換することもできます。

インナーは何を着ればいいですか。

吸汗速乾で、体にフィットするインナーが向きます。汗を素早く広げて乾かすことで、風の当たる面積が増えて効果が上がるためです。綿100%の肌着は汗を含んだまま乾きにくく、空調服との相性はよくありません。素肌に直接着るのも、汗が広がらないため効率が落ちます。

洗濯はどうすればいいですか。

必ずファンとバッテリーを取り外してから洗ってください。付けたまま洗うと故障します。ウェアは洗濯表示に従い、ファンの取り付け部が傷まないようネットに入れる、裏返すといった配慮をすると長持ちします。

サイズは大きめを選んだほうがいいですか。

服の中に空気をためて流す構造なので、密着しすぎると風の通り道がなくなります。少し余裕を持たせるのが基本です。ただし大きすぎると動きにくく、機械への巻き込みリスクも上がるため、実物で確かめるのが確実です。裾や袖口を絞れる仕様なら、多少のゆとりがあっても空気を保てます。

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、内容の正確性・完全性を保証するものではありません。規格・法令の適用可否や最新の仕様は、製品カタログや公的機関・各メーカーの情報で必ずご確認ください。

中村被服株式会社 企業ユニフォーム事業部

大正13年(1924年)創業、100年以上にわたる被服づくりの経験を活かし、山口県防府市を拠点に製造業の作業服・事務服・空調服・保護具の選定から、社名刺繍・プリントの自社加工、名入れ後の追加発注まで対応しています。山口・広島・福岡エリアの現場のユニフォームを、選定から運用までまるごとお手伝いしています。