「とりあえず刺繍で」と決めてコストが合わなかったり、大きなプリントの胸ロゴが洗濯を繰り返すうちに数年で色あせたり、きれいなロゴデータが手元になくて発注が止まったり。名入れの失敗は、加工方法の向き不向きを知らないまま決めることで起こります。この記事では刺繍とプリントの違い、比較表、用途別の選び方、データがなくても発注できるコツまで、担当者がすぐ使える形で整理します。先に結論をお伝えすると、刺繍とプリントに優劣はありません。ロゴの形、生地、数量、洗濯条件のどれを優先するかで決まります。
目次
名入れは「刺繍」と「プリント」で仕上がりが変わる
作業服やユニフォームに社名やロゴを入れるとき、加工の方法は大きく分けて刺繍とプリントの二つがあります。どちらでも名前は入りますが、仕上がりの質感も、耐えられる着用条件も、得意なデザインも違います。ここを押さえずに「とりあえず刺繍で」と決めてしまうと、コストが合わなかったり、逆に洗濯を繰り返すうちにロゴが薄くなったりします。
大まかな考え方はシンプルです。糸で縫い込む刺繍は丈夫で立体感が出るぶん、細かい表現や大きな図案は苦手。インクや転写でのせるプリントは色や図案の自由度が高いぶん、摩耗や熱には刺繍ほど強くありません。この記事では、両者の特徴・比較表・用途別の選び方、そしてロゴデータが手元になくても発注できるコツまでを、発注担当者の目線で整理します。
刺繍の特徴 ── 糸の立体感と耐久性
刺繍は、生地の上に糸を縫い込んでロゴや文字を表現する加工です。最大の特徴は、糸ならではの立体感と重厚感。光の当たり方で陰影が出るので、同じロゴでもプリントより「きちんとした」「格上」に見えます。作業服の胸元や、ブルゾン・ジャンパーの左胸に社名を入れる定番が刺繍なのは、この見え方の良さが理由です。
迷ったら「長く着るものは刺繍、短期やイベントはプリント」で考えると整理しやすいですよ!
耐久性も刺繍の強みです。糸そのものが生地に固定されているため、洗濯を繰り返してもロゴがひび割れたり剥がれたりしにくく、数年単位で着るユニフォームに向いています。工場での洗濯・乾燥が激しい現場でも、刺繍なら安心して回せます。
一方で苦手なこともあります。糸で描く以上、細い線やごく小さな文字はつぶれやすく、写真のような繊細な図案やグラデーションは再現できません。また面積が大きくなるほど糸の量と縫製時間が増え、コストと重量が上がります。背中一面のような大きな図案には向きません。
ポイント
刺繍が得意なのは「小さめ・単色〜数色・長く着る」もの。胸ネーム、左胸ロゴ、袖のワンポイント、社名の入ったブルゾンなどが代表例です。会社の顔として見せたい箇所ほど刺繍が映えます。
ひとくちに刺繍といっても、入れ方はいくつかに分かれます。作業服の名入れで実際に使われるのは主に次の3つです。

| ダイレクト刺繍 | 生地に直接糸で刺す、もっとも一般的な方法。胸の社名・個人名はほぼこれです。仕上がりが服と一体になり、剥がれる心配がありません。 |
|---|---|
| ワッペン(アップリケ) | 別布に刺繍したものを縫い付ける、または圧着する方法。付け替えができるため、個人名や部署名を入れ替えたい場合に向きます。厚みが出るぶん、生地との段差は目立ちます。 |
| 立体・特殊刺繍 | 糸を盛り上げて立体的に見せる方法。装飾性は高いものの、作業服の実用面では出番が少なく、キャップやイベント用途で使われることが多い加工です。 |

作業服では基本的にダイレクト刺繍、人の入れ替わりが多く個人名を付け替えたい場合はワッペン、と考えておくと選びやすくなります。
プリントの特徴 ── 再現度と図案の自由度
プリントは、インクや転写シートでデザインを生地の表面にのせる加工です。刺繍にはできない多色・グラデーション・写真調の表現ができ、細かいロゴやイラストもかなり忠実に再現できます。色数が増えてもコストが跳ね上がりにくいのも特徴で、カラフルなデザインほどプリントが向きます。
大きな図案を入れられるのもプリントの得意分野です。背中一面のメッセージ、イベント名、キャラクター、大判の社名など、面積の大きいデザインは刺繍より軽く・安く仕上がります。Tシャツやポロシャツ、のぼりや旗など、薄手で動きのあるアイテムとの相性も良好です。

注意したいのは耐久性です。プリントの方式にもよりますが、洗濯や摩擦を繰り返すうちに色が薄くなったり、ひび割れたりすることがあります。毎日着て頻繁に洗う作業服の胸ロゴを大きなプリントで入れると、数年後に見栄えが落ちることも。長期間・高頻度で使うものか、イベントや短期用途かで向き不向きが分かれます。

プリントも方式がいくつかあり、枚数と図案によって向き不向きが変わります。
| シルクスクリーン | 色ごとに版を作ってインクを刷る方法。同じ図案をまとめて刷るほど一枚あたりが下がります。色数が多いと版が増えるため、単色〜数色のロゴ向き。 |
|---|---|
| インクジェット | 生地に直接インクを吹き付ける方法。写真調やグラデーションなど多色の再現に強い一方、生地の色や素材で発色が変わります。 |
| 転写(DTFなど) | フィルムに印刷したものを熱で圧着する方法。版が不要なため小ロット・多色でも対応しやすいのが利点。作業服の背中ロゴなどで使われます。 |

「1枚だけ多色のロゴを入れたい」なら転写、「同じ図案を何十枚も」ならシルクスクリーン、というのが実務での大まかな分かれ目です。
あわせて読みたい加工部分の「硬さ」と着心地
見落とされがちですが、名入れはその部分の風合いを変えます。着る人の快適さに関わるため、位置と面積を決めるときは意識しておきたいところです。
- 刺繍:糸が密に入るぶん、その部分は硬くなります。面積が大きいほど硬さも増すため、大きな図案を胸に入れると突っ張り感が出ることがあります。
- プリント:インクが生地に乗る/染み込むため、方式によっては通気性が落ちます。背中一面のような広い面積では、夏場に熱がこもりやすくなることも。
どちらも「小さく入れる」ぶんには気になりませんが、大きく入れる場合は、着用時間の長さや季節も含めて考えると失敗しにくくなります。
あわせて読みたい生地との相性で仕上がりは変わる
同じ加工でも、乗せる生地が違えば結果は変わります。ここは実際に加工してみないと分からない部分が多く、サンプルで確認する価値がもっとも高いところです。
カタログの写真で見て決めたものが、実際に手元の生地に乗せると印象が変わることはよくあります。自社の工場で加工しているので、迷ったときは実物に試して、色味や質感を見ていただいてから決められます。
| 厚手の綿・混紡 | 刺繍がきれいに乗りやすい定番。作業服の多くはこの領域です。 |
|---|---|
| 薄手・伸びる生地 | 刺繍で引きつれが出やすく、下地の当て方に工夫が要ります。プリント向きの場合も。 |
| 撥水・防汚加工の生地 | 加工の種類によってはインクが乗りにくいことがあります。事前確認が必要です。 |
| ナイロン系・空調服 | 熱に弱い素材もあり、圧着の温度管理が要ります。名入れできる面が限られる場合も。 |
刺繍とプリントの比較表
それぞれの違いを一覧にすると、選ぶときの判断がしやすくなります。あくまで一般的な傾向として整理したものです。
| 項目 | 刺繍 | プリント |
|---|---|---|
| 耐久性 | 高い。洗濯・摩擦に強く数年もつ | 方式による。長期使用で薄れることも |
| 色数 | 数色まで。増えるとコスト増 | 多色・グラデーションも得意 |
| 再現度 | 細部・写真調は苦手 | 細かいロゴや画像も忠実 |
| 大きさ | 小〜中サイズ向き | 大判・背中一面もOK |
| コスト感 | 面積が大きいほど上がる | 枚数が多いほど有利 |
| 質感 | 立体的で高級感 | フラットで軽い |
| 向くアイテム | 作業服・ブルゾンの胸/袖 | Tシャツ・ポロ・のぼり |
用途別・こんな時はどちらを選ぶ
比較表を踏まえて、実際の場面ごとに向く加工を挙げます。迷ったときの目安にしてください。
同じ会社の中で、作業服は刺繍、Tシャツはプリントという使い分けも普通です。
アイテムごとに変えて構いませんので、無理に統一しなくて大丈夫ですよ。
- 毎日着る作業服の胸に社名を入れる → 刺繍。洗濯に強く、会社の顔として見栄えする。
- ブルゾンや上着の左胸にロゴ → 刺繍。立体感で高級感が出る定番。
- 展示会やイベント用の揃いのTシャツ → プリント。多色や大きな図案が映え、短期使用ならコストも軽い。
- 背中一面にメッセージや大きな社名 → プリント。刺繍だと重く高くなる。
- 写真調・グラデーションを含むデザイン → プリント。刺繍では再現できない。
- 数色のシンプルなロゴを長く使う → 刺繍。耐久性とコストのバランスが良い。
実際には「胸ロゴは刺繍、背中の部署名は大きめにプリント」というように、一着の中で使い分けるケースも多くあります。用途と着用期間、洗濯頻度を基準に考えると判断がぶれません。
注意
同じロゴでも、生地の素材や色によって刺繍・プリントの仕上がりは変わります。撥水加工の生地や伸縮素材、濃色地に淡い色をのせる場合などは、事前にサンプルで確認しておくと発注後の「思っていたのと違う」を防げます。
ロゴデータがなくても発注できる ── データ入稿のコツ
ここでは加工方法を選ぶ視点を中心にお伝えしています。位置の決め方や費用の考え方、納期、1着からの追加といった発注の進め方全体は作業服に社名刺繍を入れる|名入れ発注ガイドにまとめているので、実際に発注する段階になったらそちらもあわせてご覧ください。
加工を頼むとき、多くの担当者が悩むのが「きれいなロゴデータが手元にない」問題です。結論から言えば、illustratorのような専用データがなくても発注は進められます。名刺や封筒、既存の制服の写真、会社案内のPDFなど、ロゴが分かるものがあれば、そこから加工用のデータを起こすことができます。
とはいえ、元がぼやけた画像や小さすぎるものだと、刺繍のデータ化で細部が再現しづらくなります。用意できるなら、次のようなものがあるとスムーズです。
- ロゴのベクターデータ(ai・eps・pdfなど)があれば最もきれい
- なければ、できるだけ大きく鮮明な画像(印刷物のスキャンや高解像度の写真)
- 正確な指定色があれば色番号(パントーンやCMYK)も添える
- 入れたい位置・サイズの希望(左胸・約8cmなど)をメモで伝える
刺繍とプリントでは、同じロゴでもデータの作り方が変わります。刺繍は縫う順序や糸色を決める「刺繍データ」に、プリントは色分けや解像度を整えたデータに変換する必要があります。この変換をどちらで頼めるか、細部がつぶれないかは、加工を自社で行っているかどうかで相談のしやすさが大きく変わります。
まとめ
刺繍とプリントは、どちらが優れているというより「向く場面が違う」加工です。長く着る作業服の胸ロゴには耐久性と高級感のある刺繍、多色や大きな図案・短期用途のTシャツやのぼりには自由度の高いプリント。迷ったら、用途・着用期間・洗濯頻度・色数・大きさを基準に考えると、判断がぶれません。
ロゴデータが手元になくても、名刺や写真から起こせることがほとんどです。中村被服 企業ユニフォーム事業部では刺繍・プリントとも自社で加工しているため、データづくりから加工方法の提案、次回以降の「前回と同じで」までを同じ窓口で受けています。
よくあるご質問
刺繍とプリント、どちらが長持ちしますか。
一般的には刺繍のほうが洗濯や摩耗に強く、長く保ちます。糸を生地に縫い込んでいるためです。プリントは方式と生地の組み合わせによって、繰り返しの洗濯で少しずつ風合いが変わることがあります。毎日洗う作業服の社名や胸ネームは、刺繍を選ぶ会社が多いです。
刺繍とプリント、どちらが安く済みますか。
枚数と図案によって逆転します。同じ図案をまとめて刷るならシルクスクリーンのプリントが有利になりやすく、少ない枚数で文字を入れるだけなら刺繍のほうが手軽です。色数が多い図案を刺繍で再現しようとすると糸数が増え、費用も上がります。条件をお伝えいただければ無料でお見積りします。
1枚だけでも加工できますか。
できます。転写(DTF)のように版を必要としない方式であれば、少ない枚数でも多色の図案に対応できます。刺繍も、加工データさえあれば1枚から可能です。
入れた刺繍は後から取れますか。
糸をほどけば外せますが、針の穴の跡が残り、色の差が出ることもあります。使い回す前提なら、最初から個人名を入れない、または付け替えできるワッペンにするといった設計で回避するほうが現実的です。詳しくは名入れ発注ガイドで解説しています。
生地によって仕上がりは変わりますか。
変わります。薄手や伸びる生地は刺繍で引きつれが出やすく、撥水加工の生地はインクが乗りにくいことがあります。空調服のようなナイロン系は熱に弱い場合もあるため、実物やサンプルで確認するのが確実です。
刺繍とプリントを組み合わせられますか。
組み合わせられます。胸の社名は刺繍で品よく、背中の大きなロゴはプリントで、といった使い分けは実際によくあります。どこに何を入れるかが決まっていれば、最適な組み合わせをご提案します。
ユニフォームのご相談は中村被服へ
「何から決めればいいか分からない」段階でも大丈夫です。現場の状況を伺って、目利きでご提案します。カタログ請求・お見積は無料です。
山口県内(防府・山口・周南・下関ほか)の企業さまへは、営業が直接お伺いします。山口・防府で名入れ(刺繍・プリント)を自社加工
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、内容の正確性・完全性を保証するものではありません。規格・法令の適用可否や最新の仕様は、製品カタログや公的機関・各メーカーの情報で必ずご確認ください。

